文字狂い

オタクにもサブカルにもなににもなれずに死ぬ

喜怒哀楽_千字以内

春はよろこぶ。なんてったってやっと冬が終わった。繁忙期にさしかかり、人々はささくれたっていたものの、朝日が明るくなるにつれて、四季の始まりを感じるにつれて、優しくなれる気がする。痛いニキビから解放される。あちこちで花が咲く。年度末のプレッシャーにけりをつけると桜が咲く。そのたび日本人はほっとする。


春といえば苺。胸がヒリヒリするくらいの痛い酸味を嘘みたいに甘ったるいホイップとスポンジ、しかも脂肪と糖分でできているホイップとスポンジで美化したい。美化したら調子にのる。舞い上がって舞い上がって、夏を迎える。


夏はイライラする。だんだんと日差しが強く激しくなる。紫外線の台頭とともに人類は殺意を閃く。春のよろこびのホイップはやがて凝固してカビになる。ナメクジやゴキブリが私たちの神経を刺激して、掃除を迫られる。


夏はやることがいっぱい。死なないこと。日常を放棄しないこと。掃除すること。人との会話は甘美だったのに、今じゃ吐き気を催す。人が恋しいって何だったっけ?今は人がいたら物理的にもう暑苦しい。それを癒すには夜更かし。蛙の鳴き声はハンサム。夜風はクール。


秋はかなしくなる。夏の不祥事を反省する。私って自分本位だった。他人は自動装備であんなに大人な振る舞いを施してくれたのに、それに比べて私は人としてまだまだどうかしている。人が傷つけた経緯は知ることができず、私にできることはただ自分の痕跡を辿ることしかできず、それすらもままならない。


とにかく夏を終わらせないといけない。夏を思い出したら、あんなに不可解だった人恋しさがここで想像可能になる。こんな私にも生きる価値を下さい。このまま冬を迎えてしまったら、目が見えなくなって死んでしまう。栄養を蓄えないと。ああ、栗芋南瓜が美味しい。食べることしか希望がない。


冬はたのしんだもの勝ち。無理にでも楽しくやろう。じゃないと、寒くて何も考えることがない。あんまりたのしくやろうとすると、無理がでる。恥ずかしいことをしてしまうことがある。それでも当時は目の前の炎を絶やさないのに必死だから、それさえわかればいい。


クリスマスが年々遠ざかる。ツリーを出すまでもない。ケーキだけがたのしみ。ジャムにしたり黄桃やりんごで誤魔化したショートケーキがなんだかんだ一番美味しい。一年よく頑張ったよ。同じように一年を送り、同じように年越しをする。除夜の鐘を聞きながら、アーメン。